プロパンガスの適正価格を考える⑧

【プロパンガスの近況、安ければ良いのか?】
プロパンガスは、薪や練炭の代替燃料として発展してきました。現在は、家庭用燃料として薪や練炭は姿を消し、競合対象が電気、都市ガス、灯油に変化しました。
住宅の気密性向上により、薪や練炭では中毒事故の危険性が高まったため、より安全で便利なプロパンガスの普及を優先して、ガス料金など販売価格や無償貸与などの顧客差別を無視してきました。
プロパンガスの通常の販売方法が、ガスボンベ1本単位であった質量販売からガスメーターを経由した体積販売に変化した高度成長期に、差別価格を規制する条文を入れるべきだったのです。結果的に行政のガス料金を規制する法的根拠が存在しないため、高額なプロパンガス料金を取り締まる方法がないのです。
この様な経緯から、プロパンガス販売は、公共性の高い商売でありながら、何らも料金規制を受けることなく普及しました。
平成9年の法改正でプロパンガス販売の新規参入が緩和されると、自社の通常価格を大幅に下回る客寄せ価格が氾濫し、契約後にガス料金価格が値上がりするとの悪質行為が横行しました。この問題は、今では更に悪質化し、何が本当であるのか混乱を来している状態で、嫌気がさした一般消費者のプロパンガス離れが進んでいます。
無償配管なるプロパンガス販売独自の商習慣がエスカレートし、一挙に多数の顧客を獲得できる集合住宅への投資合戦が大手プロパンガス事業者を中心に勃発しました。
建築会社や不動産オーナーから要求される儘に多額の金銭や際限のない商品提供が行われ、その投資回収のため、高額なガス料金設定をするプロパンガス事業者が跋扈している状況です。
プロパンガス事業者によってその様な高額な投資がなされた集合住宅のガス料金は、2,000円以上の基本料金から始まり、従量単価1㎥=800円を超える物件まで存在します。当然、一度でもその様なプロパンガス供給の集合住宅に住んだ一般消費者は、マイホーム建築の際、家庭用エネルギーからプロパンガスを除外して益々プロパンガス離れが進む結果となっています。

では、低価格だけが正義かと言えば、実はそうではありません。ガス供給に問題が生じた場合、零細のプロパンガス事業者が最も早く対応できます。特に夜間や休日の場合、大手プロパンガス事業者は、5,000~15,000世帯に対し1人で対応しますが、零細プロパンガス事業者は、そもそも300~500件しか顧客を有さないので、物理的対応数に余裕があります。
1から10まで自身でやっていますから、現場経験値も豊富です。勿論、サボろうと思えば幾らでもサボれるので、ダメなプロパンガス事業者は、とことんダメなのですが・・・。
何にも増して、少ない顧客であるが故に顧客1人への思い入れが強いため、責任感が全く違います。毎日が仕事のようなものですから、業務時間に余裕があり、顧客とも濃密な人間関係を築き易く、殆どの顧客が顔見知りです。割高と言われる零細プロパンガス事業者ですが、安心感は圧倒的に高いと言えます。
また、副業でお米を販売したり、ガソリンスタンドを経営しているプロパンガス事業者も多いため、プロパンガスとセットで割引を受けられたりもします。

ガス料金の問題も全てのプロパンガス事業者がガス料金を完全公開した場合、少なからずガス料金格差は改善します。
なぜなら、現在ガス料金公開をしているプロパンガス事業者は、従量単価1㎥=400円前後が主流です。仮に従量単価1㎥=600円で販売しているプロパンガス事業者も、ガス料金公開をする以上、従量単価1㎥=400円に引っ張られる形で、値下げした上でガス料金公開をする事が予測されているからです。
零細のプロパンガス事業者は、顧客と濃密な人間関係を築いているが故に顧客のクレームが精神的にとてもキツイからです。集団の中で生き抜くサラリーマンの様に馬耳東風の技術を持っていないのです。
ガス料金の完全公開を義務づけてしまえば、ガス料金格差は、ある程度解決してしまいます。

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